ちょっと行ってみたい、と言っても、「ちょっとそこまで」という事ではなくて、「気持ちがちょっと」あるということね。
まー行けないんだろうけど。
絶海の孤島(誇張なし)
ナポレオンが島流しされた「セントヘレナ島」って、どこにあるか知ってます?僕は長年なんとなく、アフリカ大陸の左上、モロッコやモーリタニアのはるか沖合あたりにあるもの思っていました。

それで随分おとなになってから、ある時ふと調べてみましたよ。
そしたら、ぎゃふん。
赤道よりもずうっと南でしたよ。
南大西洋のど真ん中ですよ。
まさに「絶海の孤島」という表現が相応しいところでした。

![]() |
セントヘレナ島 衛星写真 maps.google.com |
英国領です
正確には、ナポレオンが流された頃は、東インド会社領。世界史をかじった人なら懐かしい名前ですね
さすが大英帝国、こんなところまで自国領にしているなんて。
島内の建物も英国調で統一されてます。
実際には、かなり狭い谷あいに街が連なっているのが分かります。
ナポレオンが暮らしていたというロングウッド・ハウスは、今も当時のままの姿を残しています。
![]() |
ロングウッド・ハウス wikipedia |
ここでナポレオンは1815年から暮らし、1821年に亡くなっています。
ひとりぼっちではなく、何人かの側近たち、その家族たちと暮らしていたようです。
総勢26人ほどとか。
寂しくなくてよかったね。
フランス所有物件
島全体は英国領なのですが、現在はこのロングウッド・ハウスとナポレオンの墓のある谷は、フランスの持ち物となっています。![]() |
ロングウッド・ハウス wikipedia |
フランス外務省の職員もひとり、駐在しているそうです。 孤独ですね。
ロングウッド・ハウスは、シロアリにやられていたのを、1940年台に修復、再建されています。
![]() |
ナポレオンの墓 wikipedia |
流石としか言いようがありません。
警戒されすぎ?
当時、ナポレオンがどれだけ恐れられていたかというと、ナポレオンの存命中、島内にイギリスの部隊が駐留するのは当然としても、お隣のアセンション島やトリスタン・ダ・クーニャ島にも小規模な艦隊を駐留させていたことからも知ることができます。![]() |
A:セントヘレナ島 / B:アセンション島 / C:トリスタン・ダ・クーニャ島 |
近い方でも、当時の船で一週間近くかかる距離ですよ?
そんなに離れていて、駐留の意味あるんですかね?
どんだけ警戒してたのよ、という感じですね。
ペリー提督
当時、東インド会社領だったというのは、ちょっと前に述べましたが、「所有」ではなく「領」であったのは、行政権が与えられていたからなんですね。国策貿易会社である東インド会社が押さえていたというのは、スエズ運河(1869年完成)ができるまでは、ここが大西洋からインド洋に抜ける要衝の地だったからです。
ちなみにペリー提督が1853年、日本に開国を迫ってやって来た時には、ここセントヘレナ島に石炭を補給しに立ち寄ったというから、日本と全然縁のない島というわけでもないですね。
どうやって行こうか
ちょっと行ってみたい、と妄想するからには、行き方も考えておかねばなりません。空港があれば、いくらか話が早いのですが、セントヘレナ島にはまだ空港がありません。
計画では2010年に出来るはずだったのですが、プロジェクトが停滞して、まだ完成せず、2011年に仕切り直して、今のところ2016年2月にオープンする見込みだそうです。
不公平なことに、「お隣」のアセンション島には空港があるので、アセンション島までは空路で行き、そこから船便でセントヘレナまで結ぶというのが、もっともらしい選択となるのでしょうか。
不公平といったのはアセンション島の人口が940人、セントヘレナ島の人口が4255人、とこちらの方がはるかに多いのに後回しにされているからなんですが。(感情移入^o^)
![]() |
セントヘレナ地図 wikipedia |
地図には、既に空港が示されています。 気が早いですね。
よく見ると、冒頭に掲示した衛星写真でも、出来かけの滑走路などを確認することが出来ます。
空路
アセンション島への空路は限られます。なんと、ロンドンの西方約80kmに位置するブライズ・ノートン空軍基地からイギリス空軍の輸送機が飛んでいる、だけです。
これに民間人も乗ることができます。
普通に予約できます。
週に2往復です。
ブライズ・ノートン基地からは、日曜日と水曜日の出発です。
民間人の搭乗可能人数、10人までです。
飛行時間は、行きが23時間、帰りが22時間です。
ちょっと心が折れそうです。
軍の輸送機の居住性ってどうなんだろう。
ワイン飲めるのかな?
周りのイギリスの軍人さんたちと仲良くできるかな?
費用は、片道510ポンド、往復で969ポンド。
ポンドは今、1ポンド=185円くらい。
http://www.ascension-flights.com/ascension-flights-schedule.htm
海路
アセンション島からセントヘレナまでは船便となります。船便は年14便です。
念のためもう一度言いますが、1年に14便です。
基本、この航路は「南アフリカ・ケープタウン⇔セントヘレナ島」を月いちで往復するもので、「セントヘレナ⇔アセンション」は言わばついでです。
そのうち、南半球のハイシーズンである12月と1月の便だけ「セントヘレナ⇔アセンション」を2往復するんですね。
なので、「セントヘレナ⇔アセンション」年14便、「ケープタウン⇔セントヘレナ」年12便です。
![]() |
RMSセントヘレナ号 wikipedia |
ちょっと具体的に、直近のスケジュールを見てみましょう。
2014-12-03 ケープタウン出発
2014-12-08 セントヘレナ到着
2014-12-10 セントヘレナ出発
2014-12-12 アセンション到着
2014-12-12 アセンション出発
2014-12-15 セントヘレナ到着
2014-12-16 セントヘレナ出発
2014-12-18 アセンション到着
2014-12-18 アセンション出発
2014-12-21 セントヘレナ到着
2014-12-22 セントヘレナ出発
2014-12-27 ケープタウン到着
これで1回です。
ちょうど今(12月18日現在)、アセンション島周辺にいることになりますね。
1月もだいたい同じようなスケジュールですが、それ以降は、
2015-01-24 ケープタウン出発
2015-01-29 セントヘレナ到着
2015-01-31 セントヘレナ出発
2015-02-02 アセンション到着
2015-02-02 アセンション出発
2015-02-05 セントヘレナ到着
2015-02-06 セントヘレナ出発
2015-02-11 ケープタウン到着
というような運行になります。
ちなみに乗客人数は128名です。
んー、これだったらケープタウンから行ったほうが良くね?
だって、アセンション島に空路で入ったら、セントヘレナで3泊4日か、ひと月か、という極端な選択しかないものね。
費用は、船室によって変わるので結構複雑。
「セントヘレナ⇔アセンション」 片道347~1381ランド。
「ケープタウン⇔セントヘレナ」 片道429~2069ランド。
「ケープタウン⇔アセンション」 片道778~3452ランド。
船室のクラスによって、それぞれ14段階の値付けがされています。細かいですね。
南アフリカの通貨であるランドは今、1ランド=10円くらい。
http://rms-st-helena.com/schedules-fares/
ちなみに、2016年にセントヘレナ空港が完成した暁には、この航路は撤廃となるらしいです。
乗るなら今ですね! (^o^)
http://www.sainthelenaaccess.com/news/
つながる?つながる?
最後に、現代的な話題をひとつ。![]() |
コネクト、セントヘレナ http://www.connectsthelena.org/ |
今、大西洋の海底に、ブラジル~アンゴラ間とブラジル~南アフリカ間を結ぶ光ファイバー通信ケーブルを敷設する計画が進んでいるのですが、これに対してセントヘレナ島の住民たちが声をあげています。
曰く、「そのケーブル、せっかくうちの島の近くを通るんだから、うちの島を経由してよ」。
「すべての人には世界につながる権利が与えられるべきだ」という、名付けて「コネクト、セントヘレナ」運動。
上に示した図で、水色で描かれた計画経路をオレンジ色で描かれた経路に変更しようという提案です。
計画されている経路が全長8970kmなのに対して、セントヘレナ島の住民たちが要望している経路では全長9020kmとその差はほとんどありません。
今までは衛星回線でしか世界につながる方法がなかったのですが、大陸間の通信ケーブルの中継点になれれば、経済的にも大きなチャンスとなります。
実際、今はセントヘレナ島内では働き口が少なく、アセンション島まで出稼ぎに行っている人がいるくらいです。
人口はアセンション島の方が少ないのですが、イギリスからの観光の入り口にあたり、両島間の船便も今まで見てきたように使いにくいので、観光産業はアセンション島の方が大きいのでしょう。
空港が完成し、通信ケーブルの招致にも成功した場合、セントヘレナ島は絶海の孤島から脱皮して、IT基地などとして大化けするかもしれません。
![]() |
コネクト、セントヘレナ提案経路 http://www.connectsthelena.org/ |
参考 http://www.connectsthelena.org/